心地好い風と美しい月

都会と自然が好きな「風月」のブログ.自然科学系出身のファイナンス専門職なので,自然や経済について気ままに書きます.

「債券王」ビル・グロース氏が引退

PIMCOのビル・グロース氏が引退!

jp.reuters.com

あまり日本のメディアは取り上げていないが,結構なニュースである.「債券王」とまで言われた大物ファンドマネジャーが引退するのだ.まぁ,世界的な低金利なので,しょうがないといえばそれまでだが….

債券運用の戦略

債券価格は金利が低下すれば上昇する.したがって,金利を下げる政策を行う国の債券(国債)を買うのが基本だ.(逆に金利が上がりそうなら,債先を売ったり,プットを買う)なので,利上げをするかしないか等に債券投資家は注意する.その上で政策金利に反応しやすい年限(短中期)でトレードを行う.あるいは,金利変化の景気や物価への影響を気にして,長期以降でもトレードを行う.

最近の債券市場

近年は金融緩和政策が各国行われており,金利は低下トレンドだった.しかしながら,日本でもマイナス金利となっており,なかなか金利低下余地がない.さらに,イールド・カーブもフラットニングしてきて,ロール・ダウンも少ない.このような市場環境の中で,債券投資家は苦しんでいるのである.債券投資家の主なプレイヤーは生保や年金等の機関投資家だ.年金基金は資産を投資顧問会社等に運用委託を行っている.したがって,投資顧問会社等はその手数料で儲けているわけだが,そもそも債券で儲かりにくい環境なのに実績連動の報酬だと,全然儲けられない….彼の引退から,そんな債券運用業界の手詰まり感が見えてしまう.

次の債券王は?

近年の債券市場を鑑みるに,次世代の債券王は現れにくいだろう.「~王」といえば,ワンピースの「海賊王」が最初に思いつく.(世代が分かってしまいそうだが…)ビル・グロース氏も「この世のすべてを債券市場に置いてきた」とか言ってくれれば,投資家がこぞって参入する大債券時代になっていたかもしれない.まあ,そんなことはないか(笑)